2022.10.31

スタートアップに学ぶ新規事業開発~事業機会の探索方法と事業立ち上げのコツ~

こころみ共催2
目次

    2021年9月27日に実施した、MSOL×株式会社Queue共催セミナー、『海外スタートアップに学ぶ新規事業開発』をレポートとして公開します。


    デジタルトランスフォーメーション(DX)において難易度の高いプロジェクトになるのが新規事業開発です。既存事業からDXによって新たな事業をうまく生み出していくためには、コツがあります。当ウェビナーでは株式会社マネジメントソリューションズ(MSOLエムソル)のストラテジックパートナーであるAIスタートアップ企業株式会社QueueのCo-Founder、CEOである柴田直人氏、元スカイディスクCEOで現在はDXスタートアップ企業62Complex株式会社のExecutive of Technologyを務めるシリアルアントレプレナーの橋本司氏、そしてMSOLのDigital事業部ディレクターである阪本幸誠の3名が、「新規事業開発」をテーマに「事業機会の探索方法と事業立ち上げのコツ」について話し合いました。今回はそのディスカッションの概要を紹介いたします。

    MSOLが新たに展開するDMOとは何か

    MSOLでは現在、長年にわたるPMOの知見とノウハウを活かし、2019年からスタートさせた新たなデジタルソリューションサービスを提供しています。その専門部隊となるDigital事業部では基本コンセプトとしてDMO、すなわち、デジタル・マネジメント・オフィス人材による顧客DX支援をサービスとして提供しています。具体的には、データ活用や業務効率化など企業のデジタル変革において、MSOLがDMOとなってクライアントに革新的なデジタルソリューションを提供していくことを目指しています。

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    Digital事業部が展開するDMOでは、ITコンサル、上級SE、業務コンサルといった専門能力は言うまでもなく、プロジェクトマネジメント力、コミュニケーション力、アントレプレナーシップ力などを併せもち、テクノロジー、マネジメントの視点からビジネスのインキュベーションやイノベーションに貢献するDMO人材をクライアントに提供しています。また、Digital事業部では案件に応じてストラテジックパートナーとともに必要なソリューションを開発・提供することも同時に行っています。その実績についてMSOL執行役員でDigital事業部を統括している李成蹊は次のように語ります。

    「すでに私たちは、小売り、製造業を始めとした多くの上場企業において、ITガバナンスマネジメント支援、基幹システムの再構築、ERP導入、新規事業開発などの領域で伴走支援、内製化支援といったかたちで多くの実績を挙げております。私たちはこれからも様々なテーマに対応しながら、クライアントの皆様の革新的なDXを実現させていきたいと考えています」
    今回はこうした様々なDXに関するテーマの中から、「新規事業開発」を取り上げ、「事業機会の探索方法と事業立ち上げのコツ」について話し合ったディスカッションの概要を紹介いたします。登壇者は、MSOLのストラテジックパートナーであるAIスタートアップ企業QueueのCo-Founder、CEOである柴田直人氏、元スカイディスクCEOで現在はDXスタートアップ企業62ComplexのExecutive of Technologyを務めるシリアルアントレプレナーの橋本司氏、そしてMSOLのDigital事業部ディレクターである阪本幸誠の3名です。

    難度が高い新規事業開発の攻略法とは?

    現在、多くの大企業ではDXへの取り組みが本格化、一巡する一方で、中小企業やスタートアップ企業ではこれからDXへの取り組みが加速する状況にあります。ただ、こうしたDXへの取り組みの中で、新規事業開発は難度が高く、多くの課題が散見されています。具体的にどのようなものなのか。柴田氏はDXの新規事業開発の現状について、こう指摘します。

    DXによる新規事業開発の取り組みでは、本業のビジネスモデルについては熟知していても、いざDXとなるとやるべき仕事が多過ぎて、何から手をつけていいのかわからなくなるケースが散見されています。しかも、DXを進めるうえで、これまでの慣れ親しんだオペレーションからなかなか離れることができないことも大きな課題だと言えるでしょう」

    橋本氏も起業以前に自動車部品メーカーで研究開発や業務マネジメントに関わったのち、企業のデジタル化やDXを担当した経験から、こう話します。

    DXと言えば、IT寄りのキーワードとして捉えられがちですが、少なくとも私が関わったプロジェクトの経験からすれば、むしろ様々なリアルビジネスでDXは有効なアプローチになると考えています。ただ、どんなDXプロジェクトでも共通していることは、歴史のある会社ほどDXによる新規事業開発や事業変革が難しいということです。いかに社内のコンセンサスをとっていくのか。そこが高いハードルとなっているのです。企業としてDXが次のステップになると決めたのならば、どうやって過去の歴史を超えていくのか。そこがDXを成功させるための大きな課題となっているのです」

    阪本も数多くのプロジェクトに携わった経験から次のように言います。

    「大きなDXプロジェクトほど経営層からトップダウンで進められることが多いのですが、そこで示される数値的な目標が実際に現場におりてきたとき、現場では何が起きているのか。もちろん現場でもDXで事業を再構築していくことに大きな夢をもっているのですが、その一方で、その理想と数値目標という現実との折り合いをどうつけていくべきなのか。その整理整頓がほとんどできていません。それが大きな課題となっているのです。どんなDXプロジェクトであれ、目標、あるいは参考になるモデルをもとに自分たちで確認しながら、どこからスタートすべきか、またはどう展開していくのか。そして、どこで収めるのか。そこを常にチェックし、理想と現実のギャップを調整していく必要があるのです」

    DXのエコシステムをつくる

    では、新規事業としてDXプロジェクトを進めていくうえで、その大きなポイントとなるものは何なのでしょうか。柴田氏は次のように語ります。

    「業界によっては、特殊な事業であるほど既存のデジタルツールの用途が限られてくる場合があります。そのため、DXプロジェクトでは、すべてゼロからベンダーに任せてしまうケースも多いのですが、私は必ずしもそのアプローチは有効ではないと考えています。やはり業務におけるコアとノンコア、つまり、何にこだわって、何を捨てるのか。そこを自分たちで決めていくことが非常に重要となってくるのです。これまで慣れ親しんできた社内のオペレーションから一度離れて、まずはゼロベースで自分たちのビジネスモデルにデジタルツールを当てはめるとどう変わるのか。充分に考えることが必要不可欠となります。
    DXを進めるにおいて、自分たちは何をする必要があるのか。例えば、業務改革なら現場の声、新規事業ならユーザーの声から得たアイデアをどんどん新規事業設計に落とし込んでいく。そうやってコアの部分を特定していくのです。そのときも他人任せにするのではなく、あくまで自分たちで実行していくことが、事業の推進力を生み出していく秘訣となります。その意味でも、これからは社内で自社のビジネスモデルとデジタルの両方に詳しい人材を育成することが大切になってくると考えています」

    一方、橋本氏は現在、福岡を拠点にビジネスを展開しており、とくに中小企業がDXプロジェクトを進める際のポイントについて話しました。

    「福岡のような地方では、少しトレンドが遅れたかたちで伝わるため、多くの企業ではDXへの取り組みがこれから本格化する状況にあります。ただ、福岡は市場が小さいがゆえに外へ出ていくことに積極的で、DXをもとに次のステップへ飛躍していこうとする意欲が非常に高いと感じています。しかし、その具体的なアプローチをどうとればいいのか。高い意欲とそのタネのマッチングがなかなかできていないのが現状だと言えます。そこを打開していくには、なぜDXしなければいけないのか。DXの必要性をUXデザイナーを活用するなどして言語化し現場や顧客に知らしめ、その大きなビジョンを経営層は経営戦略として落とし込んでいくことが必要になります。そして、そのうえで欠かせないのが、DXのエコシステムです。DXを円滑に進めていくためにも、社内外で役割分担ができるようなエコシステムをつくっていくことが重要になってくると考えています」

    では、DXのエコシステムをつくっていくうえで、自社、あるいはアドバイスする側のコンサルティング会社、またはベンダーなどと、どのような役割分担をしていけばいいのでしょうか。その方法論について橋本氏はこう言います。

    「最初に何をやるべきなのか。あるいは、何をやらないのか。そこからどこに到達したいのか。それはなぜなのか。そこを言語化していくことで課題を明確にしていく。つまり、自社の強みに何を足すことで何が強化されるのか、明確にしていくことが必要なのです。そこから、どのような行動指針をもとに進めていくのか。その一連の流れをチームの中で決めていく。具体的にはプロジェクトマネージャーとビジネスメンバーがつくったものをUXデザイナーが言語化・体験化し、それをエンジニアがかたちとして実現していく。こうした流れの中で、社内外のパートナーとエコシステムを構築していくことが重要になってくると考えています」

    このようにDXによる新規事業開発では多くの課題があり、やはり自社だけでプロジェクトを実行していくには限界があります。そんなとき適切なアドバイスを送り、DX推進に大きな役割を果たすのがコンサルタントだと言えます。現在、Digital事業部ではQueue社と共同で「DX for Teams」としてDX支援のサービスを展開するなどサービスの多様化を進めています。阪本も次のような意気込みを語りました。

    「未来発創ワークショップなど、経営層とディスカッションしながら、DXによってどのようなソリューションを実現していくのか。そこを明確化し、経営戦略に落とし込んでいく取り組みを行っています。私たちは組織設計からデジタル人材の採用まで様々な領域でアドバイスを行い、必要なソリューションを提供していきます。今後とも企画分析から実装運用、データ活用までDX支援を通じて、皆様の成長に貢献していきたいと考えております」