プロジェクトを失敗させないヒント1『PMOの役割には幅がある』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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    ※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます


    PMOの役割は、企業組織やプロジェクトによって大きく異なります。

    PMOの在り方に悩んでいる現場の方々にすれば、「そんな定義では、PMOとしてどうしたらいいか分からない」と悩むのではないでしょうか。しかし、これでいいのです。PMOとは変幻自在な組織なのです。

    「PMOはいったい、何をどこまで行う組織なのか」--。

    この疑問に対して明確に答えることのできるプロジェクトマネジャーやコンサルタントは数少ないと思います。そもそも明確に定義できるものなのかと見る人も多いでしょう。本書を通してPMOの役割を具体的に示していますが、最初にPMOの役割についてざっと考えてみたいと思います。

    PMOの役割とは

    まず、プロジェクトマネジメントの知識体系である『PMBOKガイド(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)』は「PMO」を次のように定義しています。

    PMOとは、それが管轄する複数のプロジェクトを一元的にマネジメントし、調整を行うことに種々の責任を有する組織の一部門あるいは、そのグループのことである。PMOの責任は、プロジェクトマネジメントを支援することからプロジェクトを直接マネジメントするまでの広範囲にわたる

    プロジェクト管理の手法は分かっているものの、
    ・PMOという立場でそれをどのように使っていけばよいのか
    ・プロジェクトマネジメントやチームのアウトプットに対してどのように手を出していけばよいのか
    などと悩んでしまうのは、PMOの責任に幅がある(ありすぎる)ところだと思います。PMBOKもそれを認めています。

    さらに、PMI(プロジェクトマネジメント協会)が会員向けに出している『プロジェクトマネジメントジャーナル』という季刊誌にも、PMOに関する興味深い調査結果が報告されていました。北米を中心とした500の事例から、様々な分析を行っているものです。そこからは、「PMOをどのように生かすか」という課題に対して、多くの企業が試行錯誤の最中であることが読み取れます。

    この調査結果で最も興味深かったのは、やはり「PMOの構造や役割、妥当性はそれぞれの組織によって大きく異なる」と結論付けていることです。広範な調査に基づいた結果であり、PMOの本質的な特性をうまく言い当てていると感じました。

    一方、日本においては、2000年頃からシステムインテグレーターがこぞってPMOを立ち上げています。『日経コンピュータ』の2004年2月23日号でもその内容が特集され、次のような点が指摘されていました。

    「問題点を指摘するだけで、後は現場任せ」
    「現場のプロジェクトメンバーから本音が聞けない」
    「プロジェクトの状況をレビューする人員が質・量ともに不足」

    PMOは様々な問題をはらんでいるという内容でしたが、PMOの役割が明確でなく、もがいていることの裏返しと見ることもできます。この状況は、今もあまり変わりません。

    臨機応変に自らの役割を変化させる

    私は、プロジェクトの複雑性や多様性に対応するため、PMOの定義はプロジェクトごとに違っていても構わないと考えています。これはPMIの調査結果と同じです。

    さらに言うならば、私は「プロジェクトのフェーズやタイミングに応じて、PMOの役割は異なってしかるべき」とも考えます。代表的なPMOの役割には次の3つがありますが、これらをプロジェクトの状況やタイミングに応じて使い分けていくとよいでしょう。

    (1)プロジェクトマネジャーと同じレベルでマネジメントを実行するPMO
    (2)管理プロセスを導入するPMO
    (3)プロジェクト運営の事務作業を担うPMO

    仮に、プロジェクトマネジャーの負荷が非常に高くなっている状況であれば、PMOが一時的に(1)の役割を担うべきでしょうし、状況が落ち着いてくれば(3)の役割に徹してもいいでしょう。管理プロセスが徹底されていない組織やメンバーなら、プロジェクトを通して(2)の役割を引き受けることも必要です。

    とにかくPMOは、プロジェクトがその時点で抱えている課題に対し、自らの役割を変幻自在に適応させていく"カメレオン"のような存在になるべきと考えます。このようなPMOの活動により、プロジェクトマネジメントはより一層成熟するでしょう。それでは、さっそくPMOがどのように自らの役割をカメレオンのように変化させていくのか、具体的な例を見ていくことにしましょう。

    (ヒント2に続く)