プロジェクトを失敗させないヒント11『PMOは「管理責任」を負うのか』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

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    PMOの責任範囲はどこまででしょう。一般にPMOは「管理責任」を負うと考えられていますが、PMO自らが管理を実行するわけではないですし、そこには手を出さない方がいい。むしろPMOが負うべきは「説明責任」です。

    PMOと設計開発チームでは、忙しい時期が全く異なります。PMOが忙しくなる時期は、予算調整や体制作り、管理プロセスの導入などが立て込む各フェーズの初期段階です。

    プロジェクト終盤になると、作業がルーチン化されるため、PMO自体の作業はそれほど忙しくはありません。もし、プロジェクトの終盤でPMOが非常に忙しくしていたら、そのプロジェクトはかなり危険な状態と言えるでしょう。

    プロジェクトによっては、PMOも設計開発チームと一緒に成果物を作成することがしばしばあります。プロジェクト終盤に入り、予算不足や人手不足のなか、プロジェクトメンバーが一丸となって取り組むことで、何とか期日や品質を守ることもあります。

    もちろん、PMOには基本的に、プロジェクトの成果物を作成する責任はありません。システム開発プロジェクトの場合、要件定義書や詳細設計書、プログラムなどの作成責任は設計開発チームにあります。建築や造船、エンジニアリング系のプロジェクトでも、PMOが「もの」を作ることはないでしょう。とはいえ、何とかプロジェクトを成功させるために、PMOメンバーは手を貸したい気持ちになります。毎晩、深夜まで残業している設計開発チームから「手伝ってよ」と頼まれたら、断りづらいでしょう。

    ここで改めて、「PMOの責任とは何か」を考えてみたいと思います。一般に、PMOには管理責任があると考えるのではないでしょうか。『[ヒント3]「何のため」の管理なのか』でも記載した通り、PMOの役割として、進捗管理、課題管理、リスク管理、変更管理、品質管理、予算管理といった仕組みを、プロジェクトのなかにうまく導入することが重要という話をしました。その意味では「管理をさせる」ことに責任があると言えます。

    果たすべきは「説明責任」

    また、管理責任を「実行責任」と「説明責任」に分けた場合、PMOが持つべき責任は後者の説明責任になります。整理すると、「PMOはプロジェクトの状況について説明する責任があり、そのために管理を徹底させる」と解釈できます。

    PMOの責任範囲を管理責任と定義してしまうと、PMOはこの責任を果たすために管理を強化しようとします。その結果、設計開発チーム側の管理負担が無駄に増える傾向にあるようです。管理責任は狭い意味では正しいかもしれませんが、広い意味で考えるとPMOの本来の責任は「プロジェクトマネジメントの生産性を上げること」にあるはずです。

    例えば、プロジェクト終盤における重要案件への対応を、タスクフォースで取り組む場合があります。ある特定の課題や問題に対し、時限的な組織として立ち上げます。実際に作業を行う担当者は設計開発チームとの兼任となります。PMOは、タスクフォースを立ち上げる調整や、タスクフォースで実行すべきタスクの定義、進捗管理、課題管理、会議のファシリテーションなどを行います。

    プロジェクト終盤になると、開発チームは目の前にある作業に集中してしまい、プロジェクト全体に影響のある作業をおろそかにしたり、後回しにしたりします。そのような場合に、優先度の高い作業をタスクフォースで取り組ませることで、PMOは解決を促します。

    このような、プロジェクトマネジメントの生産性を上げることに、PMOは全力で取り組まなければなりません。成果物を作る仕事との掛け持ちは、できるだけ避けたいところです。