プロジェクトを失敗させないヒント14『トラブルに必要な余裕をどう作るか』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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    ※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます


    [ヒント13]PMOは火消しの「遊軍」たれ』で述べたように、不測の事態に即応できるよう、PMOは常にある程度の余裕を持っているべきです。PMOが余裕を作り、本来すべき仕事に時間を割くにはどうすればよいかを考えてみましょう。
    PMOは、進捗報告書の取りまとめやプロジェクトの課題管理など、それなりのルーチン業務を持っています。PMOが余裕を作り出すためのポイントは、ルーチン業務を徹底的に自動化することです。
    多くのプロジェクトでは、進捗管理や課題管理などにマイクロソフトのオフィスソフトを利用していると思います。これらのツールには、ルーチン作業を自動化するために便利な「関数」や「マクロ」があります。重要なことは、最初に多少工数をかけてでも、徹底して自動化を進めることです。「いまさらマクロなんて」と抵抗のある人は、ツール作成は他の人に依頼してもいいと思います。大抵、マクロが得意なメンバーはプロジェクトに1人ぐらいはいるものです。
    私が在籍したあるプロジェクトでは、進捗管理に関して下記の12種類の資料を取りまとめて、1つの進捗資料を作っていました。

    図◎進捗会議資料の自動作成例
    進捗会議資料の自動作成例

    大きいサイズで見たい場合は図◎進捗会議資料の自動作成例.pdfにてご覧ください。

    (1) 進捗アジェンダ
    (2) 前回の議事録
    (3) マスタースケジュール
    (4) 各チームのWBS
    (5) 各チームの進捗報告書
    (6) 課題管理一覧
    (7) 課題解消状況のグラフ
    (8) 変更管理一覧
    (9) 各チームごとの変更管理状況のサマリー
    (10) テストの障害状況(障害数や障害解消数などのグラフ)
    (11) テストの進捗状況(テストケース消化数や残ケースのグラフ)
    (12) 印刷

    進捗会議の準備をしたことがある人はすぐ分かると思いますが、上記の資料を取りまとめたり、グラフを作成したり、印刷やホチキス止めなどをしたりすると、半日以上の時間を取られてしまいます。ある進捗会議の準備担当者は、毎週の準備に半日以上かけて取り組むことが自分の仕事だと思い込み、それを自慢にさえ感じていました。
    この作業が1回切りであるならば仕方がないでしょう。しかし、毎週の進捗会議で半日も時間を取られるのでは、生産性の低さから見てたまったものではありません。

    それは本当にPMOにしかできない仕事か

    これはPMOの仕事でも何でもありません。ルーチン業務において、PMOの仕事は徹底的に自動化して生産性を上げ、誰でも同じ準備ができるようにすることです。理想を言えば、マクロのボタンを一押しすれば、進捗報告に関する全ての資料が取りまとめられ、必要な部数が印刷される状態です。

    ボタン一押しは言い過ぎかもしれませんが、実際にルーチン作業を自動化した結果、半日かかっていた作業は1時間もかからずに完了できるようになりました。上図に、進捗会議資料の自動作成例をまとめました。参考にしてください。

    進捗管理資料の準備は、PMOの重要な仕事に変わりありません。しかし、進捗についていえば、PMOの存在意義は決してきれいに進捗資料を一式印刷することではありません。PMO以外の人でもできる仕事を、極力減らすことです。進捗報告に記載された問題を一緒に解決していくことなど、存在意義はPMOにしかできない価値を提供することにあるはずです。

    ツールを部品化して蓄積する

    ツールを作成して自動化する際に気を付けたいポイントは、「ツールを作ること自体を省力化すること」です。例えば、「他のプロジェクトで利用している便利なツールはないか」「過去に作ったツールは再利用できないか」など、極力ツールを作る時間を短くし、ツールを作ること自体が目的化しないように注意しなければなりません。そのためにも、PMOや標準化推進などの組織が、現場のプロジェクトと連携して様々なツールを収集・部品化し、プロジェクトに公開するなどの取り組みがあると望ましいでしょう。