プロジェクトを失敗させないヒント19『「木を見て森も見る」マネジメント』

目次

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
    お問合せはこちらからどうぞ。

    ※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます


    プロジェクトが予算超過せずに完了したとしても、それが本来目指した「成功」だったとは言えないケースが意外と多いものです。原因の1つは、プロジェクトマネジメントが「木を見て森を見ず」の状態になっていることです。プロジェクト(木)ばかりに目配りし、企業組織(森)に内在する課題への理解や対処がおろそかになってはいないでしょうか。

    そもそもプロジェクトは、なぜ必要なのでしょう。一般的な解釈として、プロジェクトは既存のライン組織では乗り切れない課題を解決するために作る組織です。そして、新しいものに挑戦するためにプロフェッショナルを集め、予算や期間の制約のなかでミッションを達成するために行う活動です。プロジェクトは非常に困難なことに立ち向かうという宿命を背負って生まれるのです。

    では、なぜプロジェクトは失敗するのでしょうか。ビジネス環境の激変やトップマネジメントの朝令暮改、予算の締め付け、人材不足など、色々な理由はあると思います。プロジェクトを成功させるためにプロジェクトマネジメントを導入したり、PMOを設置したりする企業は増えていますが、残念ながら、多くは予算管理を厳しく行うための組織であるようです。プロジェクトの目的を考えれば自明のことですが、予算を超過しないことだけがプロジェクトの成功でしょうか。確かに失敗はしないかもしれませんが、それだけでは決して成功とは言えません。何かが決定的に欠けています。

    プロジェクトは企業全体に関わること

    あるパソコンメーカーでは世界中で進行しているプロジェクトが、管理されていないものまで合わせると、数千レベルで存在するといいます。もちろんこの数字は、システム開発だけでなく、新製品開発プロジェクトなども含みます。この例からは「プロジェクト」という組織が企業全体に密接に関わっていることが分かります。

    プロジェクトの成功を考える時、欠いてはいけない視点の1つは「プロジェクト組織と既存のライン組織が不可分な関係にある」ということです。企業が解決したい問題は既存のライン組織の中にあり、常にプロジェクトの外側にあります。プロジェクトとライン組織の間に密接なコミュニケーションが必要なことは言うまでもないでしょう。

    だからこそ、プロジェクトマネジャーの役割は、ステークホルダーマネジメントなのです。みなさんの中にも日々、企業内の調整に駆け回っている人が多いと思います。プロジェクトマネジャーは既存のライン組織とプロジェクト組織の狭間で、両者の橋渡しをするべく孤軍奮闘しているのです。こんなプロジェクトマネジャーを全面的に支援することこそ、PMOに求められるミッションです。

    ただし、PMOの実情を見ていると、このミッションをあまり意識していないように思えます。プロジェクトマネジャーだけを見て仕事をしているPMO、管理標準の徹底ばかりに目が向いているPMO、そもそも立ち位置が定まらず機能不全に陥っているPMO--などです。これらのPMOに欠けているものは、「木を見て森も見る」マネジメントの視点です。すなわち、プロジェクトマネジャーと同じ目線でプロジェクトとライン組織の両方を見る姿勢です。

    プロジェクトというのは、プロジェクトメンバーだけを見ていてはマネジメントできませんし、ステークホルダーだけを見ていてもマネジメントできません。両者の人と組織全てに目を配り、マネジメントするのはプロジェクトマネジャーの役割ですが、プロジェクトが複雑化・高度化している現在、1人のプロジェクトマネジャーが全てを見回せないケースが多いと考えています。だからこそ、PMOの存在意義があるのです。

    PMOとプロジェクトマネジャーが「木を見て森も見る」マネジメントを共に実践していけば、視野が狭くなるリスクはおのずと小さくなります。