2023.09.01

プロジェクトをうまく進めるために 今なぜ心理的安全性に注目が集まるのか?

心理的安全性
目次

     2023年7月に実施したMSOL(エムソル)主催ウェビナー「プロジェクトのパフォーマンスを上げる心理的安全性~安心できるチーム作りを~」でお伝えしたテーマについて、今回はさらに深堀します。プロジェクトマネジメント(PM)において、なぜ心理的安全性が重要なのか。どうすれば心理的安全性を高めることができるのか。そして、MSOLが新たに始める心理的安全性に関するコンサルティングの概要について、当社PM事業本部のPMO室長の大内傑、同事業本部の尾関穂佳、デジタル事業部の楠川達也が語り合いました。
    (上記写真左から、楠川、尾関、大内)

    なぜ心理的安全性が注目されるようになったのか

    楠川

    私たちが日頃クライアントのプロジェクトを支援するとき、チームメンバーの声や意見を吸収しないままプロジェクトが進むと、必ず事前認識が違う、言いたいことが言えないといった不満や軋轢が高まり、水面下でプロジェクトがじわじわと崩壊していくケースが見受けられます。そうした状況を未然に防ぐため、あるいは、プロジェクトをより良くするためにも、皆が不安や恐れなく、発言しやすい環境を整える「心理的安全性」が今、重要になっていると言えます。

    尾関

    転職が気軽にできるようになり、どこでも稼げる時代となった今、会社として魅力を感じるのは、仕事の内容はもちろんのこと、自分が成長できる環境だったり、人間関係が円滑だったりすることが多くなっています。そうした環境を実現していくためにも「心理的安全性」はますます必要になっていると思います。

    大内

    なぜそもそも「心理的安全性」が注目されるようになったのか。それは2012年にグーグルがチームパフォーマンスを高める要因を研究する「プロジェクト・アリストテレス」を立ち上げたことが大きいでしょう。その中で、チームパフォーマンスが高くなる一番の要因が、まさに「サイコロジカル・セーフティー」、つまり、「心理的安全性」だと指摘されています。そこで初めてビジネスシーンで注目されるようになったのです。実際、私たちがプロジェクトの支援を行う中で、マネジメントの手法や仕組みを導入しても、なぜかうまくいかないケースが少なくありません。プロジェクトではさまざまな部署から集まって関係性が並列になるため、誰も意思決定をしない、責任のなすりつけ合いになる場合も少なくない。そのとき何が原因なのかを探っていくと、実は高圧的なリーダーがいてなかなか発言できないとか、横の部署と連携しなければならないけれど縦割りの組織になっていて気軽に話ができないといった場合が非常に多いのです。また、強烈なトップダウンの会社も組織として考えなくなってしまう傾向にあり、なんら改善を試みようとしない、考えない組織、学習しない組織ほど心理的安全性が低い傾向にあるのです。

    デジタル事業部 楠川達也デジタル事業部 楠川達也

    プロジェクトがうまくいかない
    一番の原因は「心理的安全性」の低さにある

    楠川

    心理的安全性が低い組織になると、問題が隠蔽されてしまうケースも見受けられます。例えば、上司に報告すると怒られたり、詰問されたり、恐いから報告しないといった場合が少なくありません。プロジェクトマネジメントでは本来、問題やミスが発生すれば、公開して皆で解決していくことが基本になります。しかし、仕組みがあっても、心理的安全性が担保されていなければ、機能しなくなってしまうのです。

    尾関

    強烈なトップダウンの会社はなおさらかもしれません。リーダーに説明すると高圧的な態度で詰められるし、リーダー自体の発言も朝令暮改でどう動けばいいのかわからない。きちんとレポートラインをたどっていっても覆されてしまうので、メンバーも自分が発言することに躊躇するようになってしまうケースも多くなっています。

    大内

    実はこれまで外部のコンサルタントが積極的に心理的安全性の改善に手を出しにくい面があったことも否めません。あくまでそこはクライアント任せであり、投資対効果も見えにくく、コンサルタントとしてもその責任を負いづらかったからです。  組織のカルチャーを変えていくことは本来、非常に難しいものです。もし外部のコンサルがアプローチしても、本人たちが変わろうとしないかぎり、本質的に変わることはできません。そうした心理的安全性に対し、MSOLはなぜアプローチするのか。それは私たちがこれまでさまざまなお客様にプロジェクト支援を行うなかで、マネジメントの仕組みを整えても効果が出ない場合があり、その原因について問題視するようになったからです。優れた知見やノウハウを共有しているにもかかわらずうまくいかない。そこには組織のカルチャーやコミュニケーション不全の問題があるのではないか。その根幹に手を付けなければ、自律的に企業はプロジェクトを進めることができないと考えたのです。

    PM事業本部 尾関穂佳PM事業本部 尾関穂佳

    聞いて満足して終わりではない
    必ず行動に移せるヒントを提供

    大内

    確かに外部からのコンサルの助言によって個人の行動を変えられるのかといったご意見もあるかもしれません。しかし、私たちは変えることができると考えています。組織や当事者本人がその重要性に気づき、これまでの自分の行動が心理的安全性を犯していたかもしれない。そうした無意識の行動を自覚することで、実際に行動変容は起こるのです。そのきっかけづくりを行っています。  私たちの心理的安全性のトレーニングについては、当事者本人に気づいていただくための教育コンテンツ、研修などを提供していきます。まず気づくこと、そしていかに変えていくかという過程について、私たちはご協力できることがあると考えています。例えば、週1回セッションしながら、悩みを抱えているお客様が考えていることに寄り添いながら、考えを整理していくお手伝いをしていく。トレーニングコンテンツについては今、基礎編、応用編を用意しており、基礎編はすでに提供を行っています。応用編のコンテンツも今詰めている段階にあります。

    楠川

    基礎編については、心理的安全性に関する知識や自己の気づきについて学ぶことが中心となります。一方、応用編は基礎編を受けていただいた後に、実際にチームに持ち帰って、どのようなことに気をつけ、どう行動すればいいのか。具体的にお伝えしていく内容となります。基礎編は全社員、応用編は主に役職者の方に受けていただくことをおすすめします。

    尾関

    心理的安全性を確立していくことは、一朝一夕にできるものではありません。そのため、継続的にチェックしながら段階的に進んでいくものになるでしょう。皆さんのご期待にしっかりと応えられるようなコンテンツをつくっていきたいと思っています。

    大内

    心理的安全性については学術的にもこれまで研究されてきましたが、ビジネスシーンにそれをどう当てはめていくか。コンテンツづくりでは苦労しました。また、マインドの領域に踏み込む難しさもあります。実は私と尾関は学生時代に心理学を専攻していたこともあり、学術的な理論や内容を入れ込みながらも、ビジネスシーンにも応用できるコンテンツができつつあると思っています。

    楠川

    研修のよくあるパターンは、聞いて満足して終わりというものです。しかし、私たちのコンテンツでは、基礎編、応用編ともに聞いて満足して終わらせない内容となっています。実際に行動しなければ始まらない。自分を変革させていくには、自分の行動そのものに気づくことが一番重要なことになります。そうした気づきをもとに、周りを俯瞰できる状態にまで持っていき、きちんと行動に移せるようなヒントを提供する。それが私たちのサービスの大きな特徴となっています。

    report05-3PM事業本部PMO室長 大内傑

    相手が今何を考えているのか理解しようとすることも重要
    「相手の靴をはく」という姿勢を持つ

    大内

    私は基本的に心理的安全性に対する考えや認識がさらにビジネスシーンに広まってほしいと考えています。研修の中では「相手の靴をはく」という言葉をよく使っています。自分だけでなく、相手が今何を考えているのか。相手の行動にはどのような前提があるのか。そこを理解しようとする姿勢をぜひ持っていただきたい。

    尾関

    心理的安全性を高めていくには、メンバーそれぞれが自分の見方には必ずバイアスがあることを自覚することが欠かせません。自分はできているが、相手ができていないと思うこと自体、自分ができているというバイアスです。人それぞれに見方、常識があり、正論があることを忘れてはなりません。それらを理解し、相手の立場になって常に考えていくことが重要だと言えるでしょう。そうした多角的な視点を受講によって身に付けてほしいと思っています。

    report05-4

    大内

    主に対象としているのは、社員同士の関係性や人となりが見えづらくなる規模の会社となります。そのため、いわゆる、大企業や官公庁など特殊な組織文化や長い歴史を持つ組織も対象となるでしょう。私も長年、大企業を中心にコンサルを行ってきましたが、心理的安全性を自分のミッションとしてずっと意識してきました。  例えば、お互いが相手のことを理解するための小さな試みとして、プロジェクトの会議を始める前に、最初の5分で、この場に集中できない気になることがあれば話しましょうとアイスブレイク的な時間を設けてきました。また会議で議論するときも、ホワイトボードに全員の椅子を向かわせ常に皆が同じものを見ている状態をつくり、必ず同じ目的のもとに皆がいるという環境をつくるなどの工夫をしてきました。心理的安全性とは自分の行動に気づくだけでなく、発言しやすい環境や雰囲気を作り出すことも大事になってくるのです。

    楠川

    また、「相手の靴を履く」ことは、リーダーだけでなく全員ができることだと思います。私がお客様にご支援をする際も、リーダーだけがメンバーのことを把握するのではなく、 メンバー全員がお互いのことやチーム全体を考えるような場を創れるように、小さくても少しずつ改善の取り組みを続けることを支援しております。

    report05-5

    大内

    そして、もし読者の皆さんが、どこから手を付けたらいいのか、具体的にどうすればいいのか。少しでも困ったことがあったら、ぜひ私たちのサービスを活用していただきたい。私たちは、どうすればプロジェクトをうまく進めることができるのかをひたすら考えている集団です。プロジェクトマネジメントを通して、その根幹にある心理的安全性を支援することができればと思っています。

    report05-6

    report05-7

     

    (対談日:2023年7月27日)

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